UNICEFの国際スタッフ(日本ユニセフ協会の職員じゃなくて、途上国のUNICEF現地事務所で働く人)の日本人の友人が話していたことなんですけど、日本帰国中に「国連機関に勤めています。ユニセフです。」なんていう話をしていると、「ユニセフの職員が給料をもらっている!」と不満げな反応をする人が時々いるそうです。
そりゃ、給料もらいますよ。援助のプロですから、彼らは。片手間に道楽でやってるわけじゃなくて、高い専門性を持ったプロの仕事としてやってるわけですから。生活環境の厳しいところでの仕事が多いし、危険もあるし、それなりの待遇が当然必要です。
「ユニセフのスタッフが給料をもらっている」と訝る人々にとって、ユニセフとは慈善団体、ライオンズクラブとかロータリークラブとかと同じようなものと思われているんでしょうね。途上国の貧しい人々のところに手弁当で出かけて行って援助を差し伸べる、純真な心の人たちの集団、くらいのイメージなんでしょうか。
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開発協力、国際援助の分野で、日本に力のある大手のNGOがなかなか育たないのは、この「タダ働きであるべきだ」という信仰が影響している部分も大きいように思います。国際NGOに幾ばくかの寄付をして、そのNGOがカンボジアに建てる学校の建設費になると思っていたら、そのNGOのスタッフの給料になっていた、といって怒る人がいる。
そしたら、誰がその事業を運営するんでしょう?
「お金持ちが、ボランティア精神を発揮してやればいい。若い人がインターンの一環でやればいい。」
たしかにそれで賄える部分はあるかもしれませんが、それじゃいつまでたってもアマチュア仕事だし、事業の拡大の可能性も、それどころか継続の可能性も小さい。結局、一時の自己満足に過ぎない事業や、とんちんかんな事業をやる小規模なNGOばかりになって、途上国の社会開発に自らコミットするような大手のNGOがなかなか育たない。小粒でもすばらしい仕事をしているNGOが数多くあるのも知っていますが、往々にして専従スタッフは極めて少数で、しかも薄給です。
日本人に多い「サービスはタダ」という感覚の延長線上なのかもしれません。「ものづくり」信仰が強いせいか、モノではない目に見えないサービスにお金を払う感覚が希薄ですよね。途上国に建てる学校の資材にお金を払うのはいいけれど、その建設のコーディネート作業にはお金を払いたくない。そんな空気がある。
小さなNGOや、普通に暮らす個々人の善意を軽んじるつもりはないですが、しかし、開発協力、途上国支援は「道楽」で済むものではなく、「仕事」として取り組まねばならない水準のものです。「善意の種をひとつ撒けば、大きく花が咲いて世界が平和に」というほど世界は甘くない。
世界が多くの人々にとってもっと住みやすくなるにはどうしたらいいか、という課題に取り組むことを仕事としているプロフェッショナルが世界には大勢いて、彼らの仕事がまわりまわって途上国に住んでいない人々の暮らしやすさにもつながってくるんですけど、「ユニセフの人が給料をもらっているなんて!」と文句を言う人たちにはそこまで想像力が及ばないんでしょうね。
まあ、街で外国人を見かける時か、買い物のときに「Made in ナントカ」って書いてるのを見るときくらいしか世界を意識しなくても楽しく生きて行ける日本にいれば、それも致し方ないか。
6 comments:
確かにタダ働きは出来ないので寄付金の中から給料を貰うことは正当な行為なのかもしれませんが、お金を募る際にそういったことを隠しているのが問題なのだと思います。
※募金していただいたお金の一部は職員の給料に当てられます。 昨年度実績:職員平均年収○○○万円
と明示するべきです。
善意で集まったお金を扱うわけですからその使い道は詳細に報告されるべきです。
私もそう思いますね。
自分たちであたかも慈善事業団体だという奉仕のイメージ」ばかり発しておいて、勘違いするなよ、、はないと思います。
それに頂いたお金をもとに現地での笑顔や感謝、実益となるコネクション、評判、副産物として、さまざまなものを頂くでしょうに、お金を頂いた方々にこんな表現でお返しをされるとは、ちと、あきれました。
これからは人の善意に訴える商売をしてます、とはっきり広報させてくださいね。そうすれば、勘違いで振り込まれるお金も、貴方が心外な思いをすることもなくなると思います。
募金箱掲げて金集めておいて、何にどんだけ使ったか広報してなきゃ、そういうイメージもついてまわるのも当然。もらうモン貰ってきっちりやってますというなら、友達に愚痴る前に手前の組織に働きかけるのが大人じゃないの
Anonymousのみなさま、
コメントありがとうございます。
accountabilityとtransparencyの大切さを再確認いたしました。たしかに、不透明な会計で給与を得ていれば、寄付金詐欺となんら変わりがないですものね。
まともな団体はホームページで会計報告をしていますし、登録団体であれば内閣府で会計報告を閲覧することもできますけど、そうではない団体があるのも問題ですよね。
ちなみに、UNICEFは世界150カ国以上で活動し、主に各国政府からの拠出金で運営されている大組織ですので、スタッフひとりひとりの給与までは公開されてないですけど、年次報告書に比較的詳細な会計報告があります。また、スタッフの待遇も統一の基準で定められています。(この基準は公開されています。)
ご意見、私は強く賛同いたします。はっきり書いてくださり、ありがとうございます。
このトンチンカンな考え方が社会にまかり通っているおかげで日本に強力なNGOが誕生しないのに、私も強い危惧を抱いております。
結局のところ、日本でいまだに援助について「金を貧乏人にくれてやってる」という“ドナー=お殿様”の考え方が支配的なのが問題なのだと思います。これだけ教育レベルが高く、社会が成熟した国なのに、とても残念なことです。
援助の主役は被援助国(者)であり、援助国(者)は意思と責任をもってこれにコミットするのが筋でしょう。この原則が無視されれば、それこそ資金はドブに捨てられたようなものです。
募金箱は、お金を入れるだけで気持ちがスカッとするための、免罪符として設置されているのではありません。資金を実際の援助事業運営に役立てるためです。
そしてこの事業運営は、事業を設計する人、資金調達を担当する人、会計報告を担当する人、援助物資の運送を手掛ける人、さまざまなプロの貢献があって成り立っています。これがひとつでも欠ければ、事業は「アマチュア仕事」となり、募金箱は免罪符以上の意味を果たせなくなってしまいます。
募金をする前に、一度、ユニセフのホームページを開いてみてください。資金利用の内訳を見て、どのような地域、事業に資金が割り当てられているのかを見てみてください。
そして、極論かもしれませんが、それに納得できないのなら、ユニセフへの寄付をやめてください。それでも寄付したいのなら、自分が本当に納得できる事業を運営している団体を探して、そこにその資金を届けてください。
まぁ慈善も事業ってことですよね。けっこう貰ってますね。
http://society.theguardian.com/salarysurvey/table/0,12406,1042677,00.html
開発や援助が「正しい」かといえば、カーボンオフセットの矛盾を見ても胡散臭い限り。日本でそれらの組織が育たないのは懸命なことだと最近つくづく感じます。
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